日本の庭園
根府川石採石場 造園用石材の宝庫
造園の材料として欠かせない石材の中で、非常に重宝な石材の一つが根府川石です。根府川は、神奈川県小田原市に位置しています。東京からも近く、素晴らしい石を見つけることが出来るので、頻繁に足を運ばせていただいています。
根府川石岩盤
長年にわたり採石を続けられた岩盤は、ものすごい迫力です。
根府川石の特徴である板状節理がよく観察できます。おもしろい形に湾曲して割れているのがわかります。
このような自然な曲線が一番の魅力です。
以前、秦造園で造らせて頂いた施工例です。
根府川石を 石垣 水落石 景石 前石 として使用しています。
平らな面と美しい曲線部分が生かせるよう工夫しています。
こちらも秦造園で施工させていただいた、寺院の腰掛休憩所です。
腰掛の石 地面の貼り石ともに根府川石です。
根府川石の飛び石と景石
特徴的な形を生かして、飛び石としました。
国産の石材が少なくなる中、大変貴重な根府川石の紹介でした。
心に残る風景と庭づくり(島根県大芦の洗濯岩海岸)
. 島根県松江市島根町大芦にある須々海海岸の洗濯岩をご紹介したいと思います。
私は、島根県の出身で、夏になるとよく、この近くで海水浴を楽しみました。海水浴の帰り道に眺めたこの景色は、東京で造園業を営んでいる今でも時折思い出されます。
堆積岩が浸食されてできた洗濯岩の曲線と遠くの岩島との空間がとても美しいと思います。
庭を造るときにも、このような美しい景色を参考にすることがあります。
自然に洗い出された曲線の美しさや海に消えてまた現れる感覚、波に削られた岩の気勢や空間は人を引きつける魅力を持っていると思います。
庭を造っていると、これはきまったとかこれは不自然だとかこれは力強いとか貧弱だとかいう会話をよくします。自然の美しい景色を観察していると、庭づくりのヒントがたくさん隠れているなと思います。
日本最古の作庭秘伝書「作庭記」には次の様に書かれています。
或人のいはく、人のたてたる石は、生得の山水にはまさるへからず。但おほくの国々を見侍しに、所ひとつにあはれおもしろきものかなと、おほゆる事あ れど、やがてそのほとりに、さうたいもなき事そのかずありき。人のたつるには、かのおもしろき所々ばかりを、ここかしこにまなびたてて、かたはらにそのこ となき石、とりおく事はなきなり。
この記述の、「人のたつるには」を、「人が庭を造る時には」と解釈すると、「人が庭を造るときには、自然の景の優れた部分をあちこちに学び立てなさい。」「つまらない景を取り入れる必要はない。」ととれる。
私なりに解釈すると、単に自然を模写するのではなく、自然の景から学びとれる優れたエッセンスを生かして庭を造りなさい。ということではないかと思っている。
今後もたくさんの美しい景色や、庭を見て学び、庭づくりに生かしていきたいと思います。
朝倉彫塑館の庭園
渡り廊下からの景
縁先手水鉢の景
先日、お客さんに勧められて朝倉彫塑館を訪れました。所在地は東京都台東区谷中で、日暮里の駅から徒歩5分程の高台にあります。建築は、彫塑家 朝倉文夫 (1883~1964)本人の設計、監督のもと昭和10年に完成したもので、西洋建築と日本建築がうまく融合しています。派手さは無いのですが、細部まで 丁寧な仕事が施してあり、大切に管理されているので、主張しすぎない粋で落ち着いた空気を感じる事ができました。
中庭は、「五典の水庭」と呼ばれ、地下の湧水を利用し、儒教の五常の教えを造形化した「仁」「義」「礼「智」「信」の五つの巨石と鞍馬石の飛び石、六方石 の橋が配されています。また、1月の白梅に始り12月の山茶花で終わるまで、四季折々に白い花を咲かせる木が植えられています。それは、生涯にわたって素 直さや純粋さを持ちつづけたいとのぞんだ朝倉氏が、白い花を素直、純粋の色とみたところからきています。しかし「物事は満つれば欠くる」の喩えもあり、完 璧を避けるため、一本だけ赤い花(百日紅)が植えられたという事です。